陸前高田アーティスト・イン・レジデンスプログラム

2014年から毎年開催されている三陸国際芸術祭は、東日本大震災で大きな被害を受けた三陸沿岸地域で、今も受け継がれている「郷土芸能の魅力の発信」と、「国内外との芸能を通じた交流」を目的とした芸術祭で、今回、私たちは2018年秋〜2019年春にかけて、三陸国際芸術祭2019の取り組みの中の陸前高田アーティスト・イン・レジデンスプログラムに参加しました。
2013年に発足した陸前高田アーティスト・イン・レジデンスは、国内外のアーティストを陸前高田の町に招聘し、アートを通じて、アーティストと地域の人々の交流や被災した人々の心の復興を目指す取り組みをしています。


事前リサーチ

2018年11月17日〜18日
11月の最初の訪問では震災から7年半経った町の現状を知るため、現地のコーディネーターの案内で陸前高田市と、その周辺地域を周りながら地域の人や被災地で活動する人たちに会ったりしました。

まず初めに宮城県気仙沼市にあるリアスアーク美術館を訪れました。常設展「東日本大震災の記憶と津波の災害史」では、美術館の学芸員が震災後の気仙沼市、南三陸町を2年かけて記録、調査したものを、写真や被災物、調査記録(テキスト)として公開しています。思わず目をそらしてしまいたくなる生々しい写真や被災者の声のキャプションと共に展示されている被災物からは、震災前のそれぞれの家庭の当たり前の日常が頭の中で想像されます。

こちらは、陸前高田市の被災状況や、震災後の復旧・復興事業について、写真や模型で展示している資料館です。この資料館がある周辺は、震災の時に津波の被害が特に大きかった地域です。2017年にはこの情報館のすぐ裏に大型複合商業施設が出来て、周辺に住む多くの人が買い物にくる場所となっていますが、情報館の前に広がる景色は、見渡す限り障害物がほとんど残っていないままの土が剥き出しの平地です。


宿泊したのは、陸前高田市にあるペンション福田。
女将さんがボリューム満点の美味しい朝食を毎日作ってくれます。

3月にイベントを開催する会場も検討中。いくつかの会場を回りました。



1月の滞在

1月4日
1月の滞在では、岩手県横田町の水天宮集会場を訪れ、1回目のワークショップ「今日のおべんとう」を開催しました。
このワークショップでは、いつもこどもたちの新しい発想や表現と出会うことができます。

こちらはカラフルなラーメン。
「寒いからラーメンも食べたくなるね。」男の子たちは競うように新種の色のラーメンを作っていました。

これまで色んな地域で開催してきましたが、ストローに切り込みを入れて作るたこさんウィンナーや、紙皿を折って作るクレープも初めての作品でした。

こちらは、おにぎりと、茶色いのはからあげ…?と思いきや、秋田名物の味噌おにぎりだそう。みんなよく朝ごはんで食べたりお弁当に入っていて食べるよ〜と教えてくれました。

今日のおべんとう
日程:2019年1月4日
会場:水天宮集会場(岩手県・横田町)


2月の滞在

2月22日
早朝に現地入りしたスタッフたちに、本プログラムキュレーターのコンさんと現地コーディネーターの松準さんが朝食を作ってくれました☀️

コンさんが長期滞在している陸前高田のお家。フレンチトースト、ウィンナー、コンフレークにコーヒーを淹れてくれました。


この日は、パクトさんが運営するみちくさハウスに来たこどもたちを対象に、ワークショップ「今日のおべんとう」を開催しました。
特定非営利活動法人パクトは、震災後にできた子どもの居場所づくりのために、県内外の学生ボランティアなど、他団体とも積極的に交流しながら定期的にこどもたちが集まって遊べる場所の開放をしています。

ワークショップ前の導入では、本プログラムキュレーターのコンさんが、フィリピンでの食文化について教えてくれます。
みなさんは、「Boodle Fight(ブードルファイト)を知っていますか?
フィリピンでは、お皿ではなく大きな葉っぱの真ん中にご飯を乗せて、周りをおかずで囲み、手で食べます。
こどもたちもコンさんの話に「へー!」と興味津々で、地域によって色々な食文化があること、同じ地域でも家庭によってまた色々な文化があることを意識してから制作に移りました。

お寿司や焼き鳥、卵焼き、コンスープ、イチゴアイス、プリンなど色とりどりのごはんが出来上がります。

今回はみんながおかずを1つのテーブルに集めてホームパーティーをイメージしました。女の子たちはテーブルクロスの色やお皿の下にひくナプキンの相談で盛り上がっていました。
完成後は1つの大きなテーブルにまとめ、子ども達になにを作ったのか一人一人尋ねながら鑑賞活動を行いました。

特定非営利活動法人パクトさんの活動報告はこちら

今日のおべんとう
日時:2019年2月23日(土)13:30-15:00
場所:みちくさハウス

主催:国際交流基金アジアセンター/なつかしい未来創造株式会社
協力:特定非営利活動法人パクト
後援:陸前高田市


3月23日

朝食を済ませて、本日は岩手県の南部にある大船渡市にあるカトリック大船渡教会に来ました。


午前中はミサに参加させていただき、午後に大船渡に住むベトナムの女の子たちと教会に来たこどもたちと一緒にお弁当づくりを行いました。

参加者の大半はベトナムを中心としたアジアから日本に働きにきている20歳前後の女性達。母国の有名な料理を表現し、制作中もどんな味なのか、どんな食べ物なのか私たちスタッフに教えてくれました。


特徴的だったベトナム料理をいくつか紹介します。

バインチュン
旧正月に先祖への感謝を示して食べる伝統的な料理で、日本でいうちまきと言われています。
中にはもち米、緑豆、豚肉が入っており、葉っぱで包んで蒸して作ります。写真では見えないですが、中の具材までしっかり作られていました。

バインミー
こちらは、ベトナム料理と聞いて思い浮かぶ人も多いかもしれません。柔らかめのフランスパンに、パテ、肉、ダイコンやニンジン、パクチー、などを挟むのが一般的なサンドイッチです。

バインチョーイ
黒砂糖が入った白玉団子で、上にごまがのっているのが特徴です。中のあんは色々アレンジされることがあるようです。
これはおやつで食べるものだと教えてくれました。

ソイガー
もち米を使ったベトナムのシンプルな定番料理で、日本でいう鶏おこわです。

みちくさハウス同様に、テーブルに並べて鑑賞しました。全部並べてみるととっても鮮やか。ベトナム料理を日本料理とベトナム料理が1つのテーブルに並びみんなで料理について紹介しあいました。

今日のおべんとう
日時:2019年2月24日(日)
場所:カトリック大船渡教会(大船渡市大船渡町地ノ森47-3)


3日目の朝食

今回の滞在で宿泊したのは、陸前高田市にある箱根山テラス
震災後の2014年にオープンした箱根山テラスは、美味しい朝食とテラスからの眺めが有名なホテルです。

2泊3日、大変お世話になりました!


3月の滞在

3月23日

3月21日から始まった「気仙:アートとライフをここに持ち寄る」
23日は、今回の招聘アーティストたちの作品が展示されている会場「陸前高田市立横田小学校」を訪れ、アーティストたちの作品解説を聞いてまわりました。

3月24日
「気仙:アートとライフをここに持ち寄る」内の「アート&ライフマルシェ」で、ワークショップ アジアンキッズのホームキッチン「お弁当をつくろう」を実施しました。
当日の今朝はなんと吹雪….お昼前には晴天となりましたが、風がとても強くなり、気候の変化の激しい1日でした。

会場は、県営栃ヶ沢アパート集会所
県営栃ヶ沢アパートは、301世帯が入居できる、県内最大の災害公営住宅です。自治会長の紺野和人さんは、一人暮らしの高齢者や母子世帯も多いこのアパートで、入居者たちが1人にならず交流できる機会を作るため、併設するこの集会所で、みんなが参加できるイベントを開催したり、外部からの交流を受け入れたりと積極的に活動されてきました。
最近では、アパートや周辺に住む住民主導でイベント開催したりしているそうです。
今回のイベント開催に向けても、私たちを快く迎え入れてくださりました。

イベントが始まると近隣に住む親子がたくさん遊びにきてくれました。
「街では子ども向けのワークショップイベントがほとんどないからこういう機会があるのはすごくうれしい!」といったお母さんたちのお言葉に、法人を設立した理由である、いろんな地域でアート活動ができる場をもっと増やしていきたい!という当時の気持ちが蘇りました。
集会所に設置された展示台には、この日の作品だけでなく、1月〜3月に開催したワークショップで制作されたこどもたちの作品の展示も並べて、みんなの作品が集結しました。

今回のプロジェクトは11月のリサーチから始まり、1、2、3月とおべんとうワークショップを開催するなかでも材料を少しずつアレンジし、変化させながらいくつかの場所で開催してきました。
国や地域に限らず、家庭によって普段食べているご飯は様々で、使う材料や色の組み合わせなども大きく異なり、私たちにとっても色々な発見や気づきがありました。
何より今回各イベントに参加してくださったみなさんが楽しんでくれて私たちもほっとしています。

国際交流基金 アジアセンター連携企画 『三陸×アジア』
気仙:アートとライフをここに持ち寄る
【アート&ライフマルシェ】
アジアンキッズのホームキッチン「お弁当をつくろう」

日時:2019年3月24日(日)10:00 – 15:00
場所:県営栃ヶ沢アパート集会所

共催:独立行政法人国際交流基金アジアセンター、なつかしい未来創造株式会社
協力:女子美術大学アートプロデュース表現領域研究室、三陸国際芸術推進委員会、NPO法人ジャパン・コンテンポラリーダンス・ネットワーク
県営栃ヶ沢アパート自治会、株式会社村上製材所、株式会社長谷川建設、一般社団法人SUMICA
後援:陸前高田市

改めて、2011年3月11日の東日本大震災で犠牲となられた方々には、御冥福をお祈りするとともに御遺族の皆様に心からお悔やみを申し上げます。
本プロジェクトのワークショップに参加しれくれたこどもたちの中には震災を経験していない子も多くいましたが、小さな子でも被災地で暮らす中で「震災」や「津波」のことなどをちゃんと認識しているようでした。
2011年の震災を経験し、色々な想いを抱えてこれまで生活してこられた地域のみなさん。
突然やってきた私たちを迎え入れてくださり、また来て欲しいと言ってくださったことが本当に嬉しく、私たちは今、とても暖かい気持ちで東京に帰っています。

本プロジェクトで関わってくださった地域のみなさん、アジアの招聘アーティストのみなさん、事務局のみなさんとの出会いに、本当に感謝しています。これからも復興してゆく陸前高田にまた必ず戻ってきます。

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